その5 形に残る仕事、心に残る仕事

2014-03-11

昨年の夏、北海道での講演に際し、「今まで作った本も」と声かけていただき、宅急便で送って会場に着いてみたら、下のような展示がされていました。

確かに、どれも私が今まで作らせてもらったものですが、この演出には、さすがに夢を見ているようでした。

主催者、エグヴィヴ丹野隆善さんのセンスには、このあとも度肝を抜かれっぱなしでした。ありがとうございました。

本

今までに作った本をこんなふうに陳列してもらって・・・

さて、こうしてみると、形に残る仕事というのは本当にありがたいものです。

自分が今までやったことを端的に人に伝えられるし、自分の人生が終わっても、どこかで誰かの役に立てるかもしれません。もちろんその主役はそれぞれの本の著者ですが、お手伝いした自分も陰にいる。いつも、世に出してしまったものに言い訳をつけて歩けない怖さばかりを感じていましたが、今頃になって、この演出のおかげで、少し、いいことも思うようになりました。

一方で、こうやって形に残らない仕事もあります。

食べ物を作る人、人や物の間で調整をする人はどうでしょう。

本や建物は確かに形が残ります。でも、形に残ると同時に、それはやっぱり心に響かないと「残る」ことはできのないとも思います。

どんな仕事の人も、目に見えたり触ったりできる「残る」ではなく、誰かの心に響くか響かないかが問われるのではないか。最近、そんなことから残された時間をどう使おうか、考えます。

この円卓のシーンを見るたびに、贅沢な人生をいただいたような気分になりながら、残された空間におく一冊一冊を丁寧に仕上げたいと思っています。

6月に2冊。目下、その予定でちょっと緊張する日々を送っています。    松成 容子

たまご社