たまご社発 食育通信

イラスト©森泉 千亜紀
「名シェフが教えるおいしい野菜料理」
(株)旭屋出版

名シェフが教えるおいしい野菜料理

その7

「おいしい」ために、
大切なこと


フランスでは毎年10月の第3週を、「食の週間」または「味覚の週間」と設定して様々なイベントをしています。インターネットでの情報提供が整備され、その内容も詳細で分かりやすく、世界のどこにいても『今年はどこで何をやるよ』といったことがすぐ分かるので大助かりです(とはいえ、さすがフランス。ホームページがアップされるのがぎりぎりだったので、これを見て飛行機のチケットを手配していては間に合わなかった)。

今は、2003年の食の週間のレポートや過去の概略などが掲載されているので、興味がある方は次のアドレスにアクセスしてみて下さい。

http://www.legout.com/defaultie.htm

さて、私は2003年10月10日(金)にパリに入りました。11日に開催される「食の週間の開会イベント」を見るためです。しかし、パリの友人は『本当にやるって言ってた? パリにいて、全然話を聞かないんだけど…』と心配顔。

ともあれ、「開会イベントをやります」とウワサのあった公園の奥へ進むと、小さな体育館くらいの規模の白いテントがありました。入場無料。昼過ぎには長い行列がずらずらと。中にはじゃがいもや肉製品、ある地域の特産物ブース、砂糖のブースなどなど、企業、業界団体、地域の特産物組合など様々な団体が、来場者に次々と試食を振舞っています。

土曜日の正午だったので、まだまだ出足は遅いものの、試食コーナーはあっという間の人だかり。さらに面白かったのは、15分単位で組まれたさまざまな食品の体験セミナーの人気ぶりです。パネル表示の時間と内容で、大きなテーブルの周囲に集まってくるのは夫婦、親子といろいろ。限定15人に食品が配られ、「この二つの味を比べてください。こっちは…」と説明が始まるのです。途中で食べ逃げする人なんてゼロ。質問タイムを待ち受けているのです。質問はたずねるほうも応えるほうも、おいしいものの話は止まることを知りません。こうしてチーズ、ワイン、パン、ポテト料理、果物と肉の地方料理、ジャムの素材当てゲーム、MOFをもつ職人によるチョコレート作りのデモンストレーションと試食など、だんだん人の山は高くなっていきました。

テレビの取材も入っていたのですが、撮影中でもカメラを脇に下ろしてチョコをつまんでまた撮影、といったカメラマンにはさすがにびっくり。あっけにとられてしまいました。

食べ物のゲームコーナーにも、たえず子どもが並んでいます。「フランス人が最も食べる穀類は?」、「バゲット100本作るのに必要な麦畑の面積は?」といったクイズに答えられるのは小学校高学年。5人ずつの参加で商品がもらえるのは最多正解者の1人だけ。日本なら、きっと全員に何かくれるでしょうが、フランスの、なんとけじめのはっきりしてること。

さて、そうしてテントの出口に来ると、さらに人の列。どうやら、入り口でもらったパンフレットに出ているクイズ全問正解したら、景品がもらえるのだそう。わからないフランス語の羅列から、数字を頼りに丸をつけて係りの人に見せたら、あっさり「ノン」。もう一度テントに入って勉強して来い、と言われてしまいました。仕方ないので、砂糖ブースのマダムに「ここ教えて」といったらパンフレットを渡されて、「答えは自分で探しなさい」だって。

このテントは、ただの食品お楽しみ会ではないぞ、といった姿勢。フランス人の「おいしいことのための大切」は、筋金入りだと感心したことです。

まつなり ようこ