子どもに語りつぎたい日本の歳時記

8月 梅干し作りのハイライト「土用干し」

(7月下旬~8月の晴天時)

梅干しとお茶

夏休みの風物詩だった

子どもの頃、夏休みのかんかん照りの日、庭に梅の実がずらぁ~とザルに並んで干されていたのを覚えています。結構赤くて美味しそうに見えて、ちょっとひとつ食べたくなって、いざ食べてみるとしょっぱくて失敗したと思う。そのうちだんだんしなびて梅干しらしくなって、大きな陶器の容器いっぱいに詰め込んで…。

1年分の保存食として梅干しを作る、これは祖母が自分の仕事と、丹精込めてやっていた夏の行事でした。子どもながらに遊びながらでも、見ていたのが記憶として残っているものなんですね。その作業が「土用干し」というのだと知ったのは、つい最近のこと。

三日三晩の土用干し

土用というと、うなぎを食べる丑の日が有名(?!)だけど、梅干し作りにも大事な作業をするタイミングなのです。

この土用(立秋前の18日間。今年の立秋は8月8日)あたりの晴天が続く日を見極め、赤梅酢に下漬けした梅を取り出して、ザルに並べ、風通しのよいところで夏の強い日差しに当て、夜は屋内にしまう。「三日三晩の土用干し」と言われるくらい、この作業は3~4日ぐらい行うのが一般的。そうすると、水分がとんで、梅の果皮や果肉が柔らかくなるのだそうです。

おまけ

実家の母に、「どうして土用干しってするの?」とたずねたところ、即答で、「干さなきゃ、『梅ぼし』って言わないでしょう。梅漬けでしょう、だから」と。ちょっと納得させられそうになっていたら、「1年通して気温が高くて湿度が低く、晴れの日が多いこの時期だから、この時期の強い日差しに当てると殺菌にもなるんじゃないの。昔の人は体で覚えているんだから」ともっともらしく言っていました。

●我が家自慢のまろやか梅干しの秘伝レシピ
梅干し

今年も自家製の梅と赤じそで、自慢の梅干しをたっぷり仕込みました。健康を考え、減塩でまろやかな梅干しです。隠し味は、は・ち・み・つ。今からでは間に合いませんが、来年6月頃、梅が手に入ったら挑戦してはいかが?

材料(完熟梅1kgに対して)

完熟梅…1kg
粗塩…120g
はちみつ…20cc
焼酎(35度)…20cc
赤じそ…200g
粗塩(しそもみ用)…40g

作り方
  1. 水洗いをする。熟度の足りない場合は、水に一晩浸けてアク抜きをする。
  2. ザルにあげて、なり口のへたを除き、ひとつずつ水気をふき取る。
  3. 消毒した容器に梅を入れ、焼酎を全体にまぶす。
  4. はちみつを入れ、梅全体にまぶし、用意した塩の半量を梅にまぶす。
  5. 梅に塩が充分にからんでいるのを確認したら、なるべく隙間のないように漬け、
    残りの半量の塩を上から振りかける。
  6. 中ぶたをのせ、梅と同重量の重石をのせる。容器の口を紙で覆ってふたをし、
    白梅酢が充分に上がったら(3~7日ぐらい)重石を半分の重さにする。
  7. 赤じそは葉だけを摘んで水洗いをし、水気をきる。ボウルにしそを入れ、
    しそもみ用の塩の半量を振ってよくもみ、きつく絞ってアクを抜く。
    残りの塩でもう一度同様にしてアクを抜き、6で出来た白梅酢を適量まぶして発色させる。
  8. 6の梅の上に7の赤じそを汁ごと入れる。梅としそが梅酢に浸っているのを確認し、
    その上に重石をのせる。ゴミよけのため紙でふたをして、梅雨が明けるのを待つ。
  9. 梅雨が明けて晴天の続く日を見極め、ザルに梅を広げて土用干しをする。日中、時々表裏を返す。
  10. 容器の梅酢が浸るように9の梅を戻し、その上にしそをのせる。3ヵ月ぐらいたつと、
    味がなじみます。

※通常より減塩のため、カビが生えやすいので注意を。生えてしまったら、焼酎で洗い、
天日干しにしてから、梅酢に戻してください。

柳沢美智子