From Editor

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No.6

「食」に対する民族性のちがい

振り返ってみると、今年は2度もプライベートで海外へ行く機会があった。たかだか勤めて3年のスタッフが年に2度も海外旅行とは、フツーはあってはいけない事態なのだろうが、どちらも機を逃してはならないような事情があってのことだったのだ(しかしOKしてくれた心おおらかな上司には、ホント、ゾウに踏みつぶされてもいいくらい感謝していマス)。

今年の12月は上海へ行った。その時思ったのだが、中国人って本当に食べるのが好きだ。食が文化の中心といっても過言でないくらいに。それを肌で感じた体験談を、2つ、3つ。

例えば、1人や家族だけの時はそうでなくても、人をもてなすときの料理はすごい! 今回の旅行は現地に知人がいて、その人が夕食にはレストランへ連れて行ってくれたのだが、その出てくる品数と量がすごいのだ。①お茶②おつまみ数種③前菜数種④鶏肉の燻製⑤麻婆豆腐⑥野菜鍋⑦冬瓜を使った漢方スープ⑧中華風スペアリブ⑨牛肉のカレー風味の土鍋煮込み⑩豚の角煮⑪白身魚のあんかけ⑫酢豚⑬揚げパン⑭カエル肉のタピオカミルク…。次から次へとコレデモカ的に円卓に料理が運ばれてきて、「食べなさい」「食べなさい」と知人は勧めてくる。中国では人をもてなす時は余るくらいに料理は盛大に! が当たり前。どれだけの料理をもてなせるかが自分のメンツにも関わってくる。それほどに食べものに価値を置いているということだ。ちなみに普段の友人同士の食事でも、誘ったものが全員分おごるのが中国の常識。“割り勘”なんてナンセンスなのだ。

街を歩けば美味しくて評判という飲茶店の前には、おばさんたちが思いっきり長蛇の列をなしていたりもする。おいしいのなら並びましょ的な発想は、日本人と同じようだ。また、ふいに入った大衆食堂のショーウィンドーは、豚の顔、シッポ、茹でた鶏の足、カエルの開き、木の実や乾燥フルーツなど、珍しい食材がいっぱい。奥では小龍包や饅頭などはすべて人が器用に手先を使って生地をこねたり餡を包んだり細かい作業にいそしんでいる。とにかく食べることに強い関心を持ち、手間ひまを惜しまないのが中国人の民族性であるようだ。

※写真は飲茶屋さんのショーウィンドー。上海蟹の足の身を殻から出すという細かい作業をしている。手前は身を取り出したあとの殻の山。

これと比べると、イギリス人の食生活はずいぶんお粗末である(失礼)。実は今年1度目の旅行はイギリスへ行ったのでその比較ができるのだが、イギリスで出会った料理といえば、じゃがいも、肉、フィッシュ&チップス(魚のフライ&フライドポテト)、それにファーストフード。もちろん、おいしいパン屋さんや紅茶屋さん、お惣菜屋さんもあるにはある。しかし、利用するのはほんの一握りのセレブリティだけ。一般人のほとんどが、じゃがいも~ファーストフードに頼っているため、ある統計ではイギリス人女性はヨーロッパの中で肥満度が第2位なのだそうだ(ちなみに金メダルはギリシャ女性。2001年「ヨーロッパ女性の肥満度」ヨーロッパ連合調査団ユーロスタット調べ)。つまり、食に対して(健康に対しても)関心があるのは、高収入階級の人のみ。一般市民は、そんなことに価値は置かない。安い、早いが一番! ということか。

最後に、今回の上海旅行で驚いたことをもう1つ。上海のデパートには「デパ地下」なるものがない。また、コンビニはあってもスーパーらしきものは見かけなかった。つまり、上海では個人の商店や市場がまだまだ元気。ただし、ラーメンなどが安価で食べられる屋台は最近、数が減っているらしい。もしかすると、中心街に何軒もあるマクドナルドやケンタッキー、ピザハットに姿を変えてしまった

万国共通のあの均一な味が、特に若者や子ども連れの家族にうけているという事実。食にこだわる国だからこそ、外から入った食文化にも貪欲なのか…。何でも受け入れて日本みたいにならないでほしいなぁ、なんて思ったりして。

編集スタッフ 藤井 久子