From Editor

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No.2

「食」の表現者と出会う

暑くなってまいりました。「夏のヤツめ、いよいよ来たね」と毎朝出掛けには、日焼け止めを片手に空を見上げてしまいます。前回ちょっと気取りすぎたので、今回から文章は自然体で…。

実は先日、すてきな人との出会いがあった。

きっかけは1枚の新聞記事。なんでも兵庫県の女性が、一人暮らしがきっかけで生まれた食べ物への思い、食べることへのこだわりを自作の絵と文章でカルタに表現したとのこと。私も同じく一人暮らし。彼女と同郷ということもあり、「面白いことを考える人がいるなぁ、どんなカルタか見てみたいよなぁ」と興味が湧いた。

その記事は切り取って手帳にしまっていたのだが、今月、そのカルタがお披露目されると聞き、カルタとカルタの作者に会いたい一心で銀座のギャラリーへと足を運んだ。

前もって連絡していたので、カルタの作者、北浦華子さんはギャラリーで私を見つけて声をかけてくださった。

北浦さんは、私が想像していたよりも小柄なかわいい女性で、とても謙虚。静かなたたずまいの人だった。それだけでも好感が持てるのだが、話をするうちに彼女の内に秘められた芯の強さがわかり、なおさら好感を持った。

「食には、人と人、人と土地をつなげる強い力があると思うんです。いま食が見直されているのは、そんなつながりを取り戻そうとしているから。私も『食べる』ということについてたくさんの人に考えてもらいたい。でも、そういう自分の思いをじかに人に押し付ける気はなくて、それとなく感じてもらえるような形で伝えたかったんですよね」

なるほど、だからカルタなのか。そして、「食べ物は人と人、人と土地をつなぐ強い力」という言葉がすごく心に響く。なぜなら、私が日頃考えていても、なかなか上手く言葉にできなかった思いをそのまんま代弁してくれた気がしたので。そして北浦さんの場合、言葉からさらに、遊び心を取り入れてカルタという形で思いを表現しているのだから、本当に感心してしまう。

しばらくお話をしながら、じっくり作品を見せていただき、またお会いしましょうと約束して別れた。

それにしても、自分と同じ思いの人を同じ世代に発見できるというのは、なんだか本当にホッとする。そして自分もがんばろうというエネルギーが湧いてくる。今回、そのことが何より大きな収穫だった。

編集スタッフ 藤井 久子

北浦 華子さん作
「kitchen a la carta」より